玄関正面の押入れの中にあった電気温水器は、室外に出すことが許されませんでした。
そのために玄関まわりや洗面所には収納が少なく、もったいない1畳が存在していました。

門型の壁は撤去することができない躯体の部分、キッチンの横にあるドアは、玄関からLDKへと入る唯一の扉でした。

初めてご夫婦にお会いした日、事務所での打合せが盛り上がり、その日のうちにリノベーション候補のマンションを見に行きました。
北欧への留学経験があるお施主様は、古い建物をうまくリニューアルした建物を、ヨーロッパでたくさんご覧になっており、
古いものを自分流にアレンジする楽しみ、古いベースがあってこその魅力を、よくご存知の方でした。

そうした柔軟な見解をお持ちの方でしたので、「プラン的な大幅なリノベーション」が難しい物件であったにも関わらず、そのデメリットを個性として生かすことをご採用いただきました。
間取りが変えられないからこそ、ひとつひとつのパーツやサイズにこだわり、同時に作業性やインテリアについても検討を重ねました。
スケール感を含め、時を重ねた建物だからこそ醸し出せるレトロな魅力に、現代のデザインをミックスさせたリノベーションになりました。